道具であって道具ではない存在

どこか遠い国のアンティークや、古い物が持つ独特の佇まいに心を奪われます。
今はもう、その物がもつ本来の役割は終えていても、残されたキズや、シミや、風化した色彩は、
遠い記憶を呼び起こし、今を生きる私たちの感情を揺さぶります。
棚に置く。壁にかける。そこに陽の光が差し込むだけで美術館の絵画のように映え、
本来の道具としての機能とはかけ離れた価値が生まれ、
現実を無視した「オブジェ-Objet-」として存在することができます。
シブヤカバンでは、オブジェとしての美しさを帯びた、佇まいのある品々をつくっています。
日常の中で、より長い時間を共に過ごしてほしいから、
現代の生活にあったごくシンプルな道具として設計しています。
身に纏っている時はもちろん、無造作に床に置いたり、椅子の背もたれにかけた時、
その景色に美しさを感じることができるもの。
それらが、私たちの日常の中に必要な癒しや、豊かな心の在り方を与えてくれると信じています。
また、自然の資源を活用することを大切にしています。
革は、生き物として経過した歳月の積み重ねを表現できると考えるからです。
一つとして同じ時間を重ねてきていないからこそ表現できる、
素材本来の自然なシワや色ムラのそれぞれの個性を尊重し、一点一点、手仕事で微調整を加えます。
そして、手元に届いたその時から、自然に経過したエイジングの風合いを感じていただけるように
創意工夫を凝らして素材と向き合っています。
そうしてつくる作品達が、今を生きる人の日常に寄り添い、
いつかアンティーク品として、また誰かの手に渡る日を願っています。